其処は苔生した洞窟だった。















『故郷の大地』






我らの名は ロト

我ら血を引きし者よ
ラダトームから見える魔の島に渡るには、3つの物が必要だった
我らはそれらを集め 魔の島に渡り『魔王』を斃した

そして今、その3つの物を3人の賢者に託す
彼らの子孫がそれらを守ってゆくだろう

・・・再び 魔の島に『悪』が甦った時
それらを集め戦うが良い
3人の賢者は この地の何処かで
そなたが来るのを待っているだろう

ゆけ!我らの血を引きし者よ!









朗々とアーリアがその文章を読み終えたのと一同が溜息をついたのは、ほぼ同時。
しかし、それは感嘆や陶酔のではなく、『どっとヤル気が失せきってしまった』溜息である。
洞窟特有のねとりとしたイヤンな湿気が大増量。本日キャンペーン実施中(当社30%比)。

各々の視線は宛もなく虚空を漂ったまま、アーリアのみ湾曲して見ないよう無駄な足掻きをしている。
その姿は、何れも口を閉ざして、時間だけが過ぎるのを北の国から待っている様で。
「さだ○さし」のバイオリンが聞こえてきそうな気まずい雰囲気に。賢者アーリアは不服だった。



「・・・なんだ。それが感想だと言うのかッ!!?」



「まァね〜・・・有る意味でェ『期待していた通り』でこう〜・・・ありがとね。」



魔女レミラは正直。且つ、自分に有害暴力が、めぐり回って来ないよう答えた。
嘘を付かない彼女の性分では精一杯に(自分に)配慮した答えである事は、伏せておく。

性格、セクシーギャル。自称、一般常識の申し子。他称、頑固親父ギャル。
エルフと人間の相の子(ハーフエルフ)だが、思考回路は誰よりも「人間らしい」。
(「人間外思考回路」を持った奴の方が多い)パーティ内では苦労人を背負っている喜劇の少女(笑)。



「『貴女らしく』という意味では構わないんですが、どうにもコレを後世に残すというのは・・・」



賢人レムサスが丁寧な物言いで、中身は心無い言葉を、レミラの発言に対して付け加えた。
自分がそう言ってしまった故の事だと彼なりの気の遣い様だったが、ぶっちゃけ責任転嫁甚だしい。

性格、おせっかい。しかし、男のおせっかいは、傍迷惑なだけの人。
元遊び人職。極め極めて前人未到の境地にまで立った変人。かなりのむっつりスケベを自認。
アーリアとは異なり、自力で賢者になった人なので、色んな経験がステキに豊富。アリアハン勇者専属学術者兼任。



「ヒューはその程度の事なんて、気に留めないと思いまつッ!」



独特の話し方で商人パックルは、アーリアの尊いプライドをズタズタにしつつも庇ってみる。
(若干の人権侵害の問題は有るものの)彼女なりのフォローには違いなかった。例え返し刃でダメージを与えても。

性格、しょうじきもの。ただし。いい意味でも悪い意味でもの、正直者と確認。
白猫(名称、ピロリ)と世界中を行商の旅をしていたが、人生選択を間違って(?)アレフガルドに降下。
それ以来、勇者ヒューザ一行と共に旅をする事となった。なお、現状において最年少である。



「俺様の好みじゃないがな!!」



空気を読めないのか読まないのか・・・武道家ヤムタが、言い辛かったことを言い切った。
彼が所属していた部隊の隊長曰くには「彼の思考回路は生来より軽快の余地無く、破綻したままだから仕方ない」との事。

性格、ちからじまん。ついでに、白痴自慢で、無神経自慢の、恋の奴隷自慢。
ラダトーム城にてレミラに世紀末のフォーリンラブして以来。彼の脳みそは死に絶えている。
マイラ在住の養母の鉄拳と最弱モンスター代表スライムに、捨て身でも勝てない駄目人間代表。



「──っていうか、こんなんの残しちゃ、俺らの末代に恥を晒すさね。」



周りの意見に埋もれる様、あえて声を控え気味に盗賊エルザナがさり気無く毒づいた。
尤も、この言葉を最後に彼は沈黙させられてしまったのは言うまでもない事だ。と言うか、弱すぎる。

性格、ひねくれもの。切れ者だったのは過去の話、今ではすっかりヘタレが定着。
アリアハン聖教会協長の子息。典型的なお坊ちゃまも、長い旅路の果てにヤラレキャラと化した初号機。
元は僧侶だったが、人生選択すっかり間違って。現在は盗賊。役柄が小悪党なのは最弱ゆえか、役作りか。










其処は背を伸ばして立つにも両手を広げるにも不自由な洞窟だった。

内部を魔法で明るくしているから、余計に視覚的な圧迫感もあって、
決して、常人的な思考の持ち主ならば、長居したくない様な場所であった。
しかし。既に隣人の息を通じて苔の臭いは鼻腔に充満していた為、彼らの誰もが、
最早、そんなこと気にちゃいなかった。・・・・て云うか、生存力がゴキブリ並みにシブトイ。
適応力はアメーバかウィルスレベル。隕石が落ちたって死にやしない・・・・かもしれない。

現在。肩身を詰まらせながらも車座になり話し合いを続け居座り続けて、小一時間を経過。
一人一人に半畳程の座るスペースも無かったが、彼らに不満は無かった。
それは、こうしている時が、残り幾ばく程度しかない事を知っていたからであって、
一部思考が人間外の者はいるものの、身体構造は殆どの奴等が人間レベルなので、
好き好んで居るのでは無い事を追加しておく。(一部にそうでないのもいる事は、小声範囲で)


やがて恋する鉄筋、敵は発見し次第にデストロイ乙女が。いとおしい者の気配に気付いて立ち上がる。
その五感覚が、既に人間の域を超越しているのは、ココだけの話にして下さい。

アーリアが視線を向けた先。
其の方向には人影と気配が二つあった。





「どう?石碑に残す文章は完成したの?」





先にアーリアに声を掛けたのは、女勇者のグレイスだった。
言おうとした言葉を抑えられたので、アーリアは瞳を点にしたまま沈黙。

直後、彼女は挽き潰されたウシガエルの様な呻き声を、雄たけびの如く上げて赤顔した。
原因は。レミラがアーリアの傑作が書いてある紙を、間を置かずにグレイスに渡したから。
そしてソレを何の疑いも無く、大きな声で音読し始めたからに他ならない。
ちなみに「声を出して読んでみ」と要らぬ進言をしたのは、エルザナと云うことで。


何も知らないというのは、時に人生に於いて誤った判断と残酷な結果をもたらすものである。
グレイスは何の疑いもなく其れを受け取り、およそ彼女の人生には不必要な発言に沿い、
非常に女性らしい声で、女として何処かを間違えきったアーリアの傑作品を読み始めてしまった。

だが、初めこそ声は出ていたものの。案の定と言うのか、なんと言えば良いのか。
次第にその声は、可哀想な程に貧弱に、か細く聞こえないモノになっていった。
それでも彼女は読むのを止めなかった。生真面目で正直な性格が後戻りをさせなかったからだ。


不可抗力とは言え、せめて同情してあげて下さい。


最後の件を読み終えるや否や彼女は膝を折り、自分の行いを恨み・・・・・・後悔の海に沈没。
人間、ある程度は不真面目に生きても良いんですよ、とレムサスが余計な発言をして、止めを刺す。
抜かりない、隙なし男賢者が此処に居ます。彼は鬼です。さしずめグレイスは羊ですか?

グレイスが完全に沈黙してしまった為、アーリアは更に窮地に立たされてしまった。
いっそ誰か笑い飛ばせる者がこの場に居て欲しかったと思ったのは、彼女にとって初めての事で。
武士道、任侠道最前線を生きてきたアーリアには、この事実は彼女自身の人生に掛けて絶対否定したかった。
――・・・が! 雰囲気からして「アーリア擁護論」は、遠い望郷の彼方へ消え去って塵になっていた。
全員の責め訴える眼差しに気圧されて、アーリアはヨロヨロと後ずさる。普段なら考えられない事態だ。
否、むしろレアだ。空前絶後だ。全員この事を深く記憶に刻み付けるだろう。後世に遺せないのだけが無念である。

アーリアは。今、彼女の身体を支えるように居る最後の頼みの綱を上目遣いに見た。
そこで絶体絶命の彼女と、彼女を取り巻く周囲が見たモノは──────────ッ!!!






























絶対的な愛と慈悲に満ち満ちた不敗の勇者ヒューザの無敵の笑顔































・・・・・・だったとさ。



ちなみに。彼の愛は、一人の人にしか捧げない。酷く歪んだモノで。
彼の絶対的な強さは、何人たりとも敵う者なし&敵えさせるつもりもないし。
「立ち向かって来るヤツがいるなら、取敢えず掛かって来い?(微笑)」発言の本人です。

  そんな、彼が勇者なんて。なんと恐ろしい世界なんでしょね☆(無責任)






本日の教訓。


『覇者顕彰』=強い者には敵わないこと。最早其処には正道も仏道もない・・・らしい





後世の記録には、この「ロトの石碑」はラダトーム王室によって作られたと記されている。

おそらく実際に制作段階に至った際、特殊な技術を持たなかった彼らの代わりに王室側が、
ものものの費用と制作を引き受けたもの、と多くの学者は考察しているものの。

反対に、歴史を物語や伝承の中に追いやる為に敢えてロトの名を出さなかったのではないか。
という説もある。だが、現在、確かに言えることは、一つだけ。


彼らが歴史に名を出したのは僅かな期間だけで、
後々の足取りに明確なものが一切無いと云うことだろう。

特に37年頃にこの地に来たとされるヒューザ=ロトとアーリア、エルザナに関しては、
38年の凱旋以来、姿を見たと云う風聞もなく完全にその消息は途絶え、文書にも何も残っていない。
一部には元の世界に還ったと云う説や王室に暗殺されたと云う説を唱える者もいるが
未だにどれも推論の域から脱しているものは無く。多分、この先も明らかにならないだろう。


現在、王室にはグレイス=ロトの物とされる片身の紋章があるが、其の真相も定かでない。













































「俺達が如何なる存在と戦って、何を考えて、どう生きたかなんて知らない人の方が多いだろうな」






























ヒューザは一言一言を噛み締めた。



















───────────────────────────┤

自己紹介を兼ねたお話でした。ギャグリアスの典型ですね。
個人としては、こういう訳解らない終わり方するのが一番落ち着きます。
だから明確な終わりを書くのも描くのも苦手です。いけないことですね・・・
さて、これから色々やっていくつもりですが・・・やっと始まるのか〜って感じです。
今まで(ゲーム)本筋中心で全部省いてきましたから気合いが入るってものです。

予告「故郷の大地」ではいわゆる番外編的な部分を書いていきます。
人生と云うモノは終わりがあるものです。
出来る事でしたれば、彼らの末期も見届けてやって下さると嬉しいです。
ちなみに最後の言葉は数十年後のヒューザが言ったものです。

初稿 04.06.01   修正 05.05.22


ブラウザを閉じてお戻り下さい。

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送