【はじまり】
「・・・歴史は、語る・・・」
ラダトーム歴330年9月、勇者ロトの末裔であるアレスとローラは、竜王の恐怖から往年の平和を取り戻した。
竜王討伐後。現王から国と王位を継ぐよう頼まれた勇者アレスだったが、新たなる大地に「自らの国を創りたい」とだけ告げると
翌朝には、孤高のまま旅立った。本来の正統後継者である王女ローラも未来を求め追い、祖国を去る。
やがて2人は縁あって結ばれて新たなる大地に、ラダトーム歴342年「ローレシア」を建国したのだった。
それから暫くは、穏やかで健やかに平和が育まれて。大陸でも祖国でも、同じ幸福が得られる様になった。
ラダトーム歴で374年に、アレス(真覇帝)が崩御。国は、彼の息女で後継者たる3姉妹へ譲られた。
しかし彼女達は3人共がで同じ国に留まる事は良くないと判断し、世に言う『三国立分の意』として
1人が荒野に新国「サマルトリア」を建国する『創分』と、1人が月下大陸最大国家「ムーンブルク」に輿入れての
国交の円満を取持つ『結分』と、1人が故国「ローレシア」に残り久遠の繁栄と平和を約束する『在分』を
内外に盟約して母国より独立をしたのだった。その後、姉妹は同じ時間を2度と過ごさなかった。
結果的に姉妹の決別によって、三国はそれぞれに友好と血縁の下に繁栄し、その平和は100年間は続いていた。
ラダトーム歴510年、「サマルトリア」に火急の報せが入る。『ムーンブルク、魔物の襲撃に遭い、一夜にして滅亡』
巨大国家の突然の崩壊というその事実に、人々はただ驚き、ただ戸惑い、ただ恐怖した。ある一部を除いては・・・・。
「ローレシア」の王子アレウスが、行方不明になってから2年経った・・・・ある平和な日の出来事である。
【主要登場人物】
《アラウス》 サマルトリアの第一王子 17歳
温和で物腰柔らかな好青年。一見、その柔和さが優柔不断の印象を与える様だが、その実は、
己の主義主張を突き通す意思(やや石頭気質)の持ち主。とは言え、基本は協調主義。
多少の事では凹たれず、それ故に、頑固である。意外と、精神は静かな直情型。
ロザリアとは許婚関係にあり、それを受け入れている。 一人称は、「俺」。
《ロザリア》 ムーンブルクの第一王女 15歳
温厚博織。時として、心に1つと思ったら真っ直ぐに進んでしまう猪突猛進な所もあるが、
礼儀作法や自分の振る舞いに気をつかい、意中の相手に気を揉んだりする、この年頃らしい少女でもある。
若干、乙女趣味に染まりやすい上に、世間知らずの感があり。潔癖理想主義者。
アラウスとの許婚関係には大賛成している。 一人称は、「私」と「ローズ(愛称)」。
《アレウス》 ローレシアの第二王子 16歳
双児の兄が流行り病で亡くなった為、現在はローレシアの第一後継者。本人も承諾済み。
両親に溺愛されて成長した我侭な性格と偏った思想の主ながらも、向上と探究に余念がなく、貪欲。
実質的な理を優先とする所もあるが、ロマンティストの気質がある。また、自他共に認めるフェミニストでもある。
現在、許婚関係の女性がいないが、割り切った関係はあるらしい。 一人称は、「僕」。
【禊ぎの章】
芽生えた愚かな心、神々は欺かれ。
この世界にもたらされた破滅の旋律。
欲望の悪魔と踊れ。時代が生んだ毒薬。終わり無き罰を飲干せ。
巡り巡る歴史を今、そっと君だけに託そう。 今、君の声を聴かせてくれないか・・・・?
ロトの名を引き継ぐ者 旅立ちの瞬間。サマルトリアから。
ロトの血族たる者 前編 違和感を覚えた時。ムーンペタより。
ロトの血族たる者 後編 つかぬ間の再会。ムーンブルクにて。
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